2022年3月24日木曜日

求められたかたちで解答すること

算数・数学では、等号=でつなげて大きさ(値)を維持しながら、式などを一定のかたちにすることが求められることが、よくある。計算というのは、演算子と数、括弧などから構成された式を、単一の数に変形することである。因数分解も、単一の数を複数の因数に分解すること、単一の多項式を複数の多項式の積の形に変形することである。


a)分数の計算問題で、答えを=21/30と書くとバツになる。そのバツは、しかし、21/30=7/10であることの否定を意味しない。それ以上約分できないかたち(既約分数)が求められているのに、それができていないからバツになった。

算数・数学では、もっとも簡単なかたちにすることがしばしば求められる。計算というのは、大きさ(式の値)を維持しつつ、もっとも簡単なかたち(通常は、単一の数値)に変形することを意味する。4×3という計算問題の答えとして、3×4とか6×2、13-1とか2×4+5-1は不適切である。

98/14のように、分子が分母の倍数のときは、整数のかたち(7)にしなければならない。まだ約分できるかどうかの判断は、2つの整数のあいだに共通素因数があるかどうか(互いに素でないかどうか)を判断することでもあり、その判断力の訓練は、数学ののちの学習にも役に立つ。


b)算数では、3.9+5.1の筆算で、答えの9.0の0を斜線を引いていないと減点されるが、これは、小数点以下にゼロしかない場合ゼロを消すように言われていたのに、それができていないから。そのような採点を見て、算数では9.0≠9なのかと疑念を呈した人がいたが、採点した教員は、もちろん、9.0と9が等しくないと考えている、というわけではない。


小数9.0のように、整数で言い換えられる数を、整数の形にするのは、98/14をそのままにせずに整数7にすると同じ理由から。小数の足し算は小数を学び出すと、すぐに出てくる。小数学びはじめの児童に、筆算の結果出てきた9.0が、既習の整数9と等しいことを意識させるため、筆算であえて斜線を入れさせているのである。

なお、小数のたし算筆算は小3で学ぶが、有効数字は中1。また、算数・数学に出てくる数は、通常、測定値ではなく、誤差がない厳密値なので、有効数字の考えはここに適用できない。


c)学校算数では、かけ算の文章題では、かけ算の式を教科書や授業でそうしていたように、〈1つ分×いくつ分〉の順に書かないと、しばしば、バツになる。


たとえば、「3つの袋のどれにも4個入っているとき、キャンディは全部で何個?」という文章題では、各袋のなかの個数が一つ分の数なので、文章中に数が出てくる順とは逆に、式としては、4×3=12と書くことが求められる。

これは、どれが1つ分で、どれがいくつ分かを児童に理解させるため、である。というのも、児童は、文章の解析力がまだ不十分で、「今はかけ算を学習中だから」という理由で、数の意味も考えずに、文章中の2つの数字を拾い出して、掛けて答えを求めようとするから。

そのようなやり方だと、学習中の単元の情報がないときは、与えられた文章題を何算で解くのかが、わからない。掛けたり割ったりして、ありそうな答えが出る演算を選ぶことになる。そのような皮相なやり方だと、掛けるときも割るときもある、高学年で学ぶ割合の文章題で、立ち往生してしまう。文章が表す事態に見いだせる数的関係や数の意味から、使う演算を割り出せるようになるべきであろう。

バツで採点した教師は、けっして、4×3≠3×4だと言おうとしたのではない。つまり、かけ算の交換法則を否定しているのではない。〈1つ分×いくつ分〉の順に書くようにと言われていたのに、それができていないから、バツにしたのである。3と4のかけ算の式を〈1つ分×いくつ分〉の順に書くように、求めているだけなのである。

もし3×4が〈1つ分×いくつ分〉の順に書かれていたのだとすると、3×4は3個のものから成るまとまりが4つある、という意味になるが、しかし、文章題では、4個入りの袋が3つなので、意味が違ってしまうから。

定数氏らは、順序指導は1+1=7だと教えるのと同じで、嘘を教えることだ、と主張して、この指導法を激しく非難している。これは、その採点が4×3=3×4という交換法則を否定している、と勘違いしているためである。

これは、既約分数になっていないからバツにしているのに、21/30=7/10を否定しているのと誤解しているのと、同じ状況である。小数の筆算で、答えとして出てきた.0のゼロは、斜線を引く、という指示に反しているからバツにしているのに、9.0≠9だと言っている、と誤解するのと、同じ状況である。

特定の形で答えを出すことを求められる範囲や時期は、広く長いことも、そうでないこともある。分数の答えを既約分数のかたちにすることを求められるのは、中学くらいまでであろうか。大学入試だと、問題冊子に「既約分数で表すこと」とわざわざ書いてあることを考えると、高校では既約分数にすることが求められ【ない】こともあると見られる。

小数の筆算の結果で、小数点以下にゼロしかないときは、そのゼロに斜線\を引くというルールが通用するのは、小学校の中学年までであろう。このルールは有効数字の考えと相いれないので、遅くとも、中1で有効数字を習うときまでには、廃止されていないといけない。

文章題などで〈かけ算の順序〉を守るように求められるのは、小学校であり、中学以降はない。小学校であっても、高学年では、教師の判断で、求められないことがある。〈かけ算の順序〉は教え方なので、教える対象によって、教え方を変えるのは普通である。自由派の教師に当たれば、低学年・中学年でも順序通りは求められないであろう。


(Twitter @flute23432 2022/03/06 04:45PM などに基づく)